人気ブログランキング | 話題のタグを見る

風の書(a history book on the wind)

風の書(a history book on the wind)_c0345705_13355399.jpg


風を感じたくて、この夏読んできた歴史書。
(まさか八月の終りにこんなにゆっくりと大型台風が近づいてくるとは…)
ボッティチェリの『ヴィーナスの誕生』に登場する風の神、ゼピュロスが表紙に!
風の息を受けて空中に舞うのは、須磨のバラ園にも咲いていたオールド・ローズ。


風の書(a history book on the wind)_c0345705_14581629.png


著者はアラン・コルバン(1936-)。フランスの“感性の歴史学者”です。
同じ著者、同じ出版社の『音の風景』(1997年刊)より
ずいぶんコンパクトになりました。


風の書(a history book on the wind)_c0345705_14335189.jpg


去年刊行された全く別の歌集とちょうど同じサイズです。


風の書(a history book on the wind)_c0345705_14522522.jpg


筝を立てたようなエオリアン・ハープの写真に驚きました(下図)。
17世紀半ばにドイツの学者が発明した楽器なのだそうです。
(ケルトの古い楽器と思い込んでいました!)
家や庭園、別荘などに置かれ、自然の風で音が奏でられる弦楽器です。
ウィンド・チャイムのようなものでしょうか。
ドイツやイギリスで、18世紀末にかけて普及してゆきました。


風の書(a history book on the wind)_c0345705_13435272.jpg


F. ショパン (1810-1849) の 練習曲Op25第1番
「エオリアン・ハープ」または「牧童」と呼ばれます。
調べてみると、エオリアン・ハープに喩えたのはシューマンだとか。
ショパン自身は、風のなかで笛(chalumeau)を吹く牧童をイメージしていました。
「エオリアン・ハープ」、前奏曲4&6番、夜想曲1&16番、「子守歌」などを
とあるピアノサロンのプレイエルで弾かせて頂きました。


風の書(a history book on the wind)_c0345705_10435826.jpg



18世紀後半のドイツといえば、
ゲーテやシラーの「疾風怒濤運動」が思い出されます。
文学の登場人物の内面はその時どきの天候と連動して描かれます。


風の書(a history book on the wind)_c0345705_10354148.jpg
薔薇「ゲーテ」(須磨浦公園)


そういえば、小説の主人公が不安に苛まれる場面では
風が吹いたり雨が降ったりすることが多いですね。
日本の時代劇でも、お侍が風雨に打たれて歩く場面が切り替わると
出家していたりします。


風の書(a history book on the wind)_c0345705_11475417.jpg
矢田寺(2016年)


18世紀末には気球が発明され、人類は神の視界を得ます。
それは空を神格化する思考との訣別でもありました。
『女の一生』の作家モーパッサン(1850-93)も
気球「ル・オルラ」号に乗りました!


風の書(a history book on the wind)_a0332314_21015799.jpg



モーパッサンの空中散歩のしづかなり気球は風、風は気球よ

c'est seleste
la promenade aérienne
de Maupassant
un balloon est le vent,
le vent est un balloon


風の書(a history book on the wind)_c0345705_21403466.jpg


パリ五輪にはルドンの目玉ふうの気球が登場。
パラリンピックも始まり、相変わらず人気スポットのようです。
気球はフランスのモンゴルフィエ兄弟によって発明されました。


風の書(a history book on the wind)_c0345705_13351032.jpg


おまけ*Bonus

この映画のなかにも時おり強い風が吹き荒れました。
「めぐり逢う朝」(パスカル・キニャール原作)
この映画のお話はまた来月…


風の書(a history book on the wind)_c0345705_19302722.jpg

(All Rights Reserved)