

歌友からいただいた陸奥A子のカレンダーとポストカード
今は昔、1970年代から少女誌「りぼん」で活躍した漫画家がいました。
高度成長期からバブル期を経て現代に到る世相を作品に敏感に反映させ昔も今も、ファンの心をつかんできました。現在は陸奥A子ギャラリー花café まであるそうです!

「あるそうです」?そうなんす。行ったのは私ではなく歌友さん。
snowdropが陸奥A子を好きなことを覚えておられて、旅先でギャラリーに立ち寄り、お土産を選んでくださったのです。申し上げていいでしょうか…snowdropよりもご年配の男性です。


ご友人と一緒で照れもおありだったかもしれませんが、そんな事は素振りにも見せず
爽やかに手渡してくださいました。「子供だましですみません」だなんて!「子供ですから!!」と両手で抱きしめんばかりに受け取ったsnowdrop。袋の中身をよく見れば、白木の額縁つきの本格的なインテリア品です。紙製だった「りぼん」のふろくよりずっと大人向けですよ~。
ふろくの冊子(左)* ふろくについての研究書(右)
月替わりのイラストは見覚えのあるものばかり!原画でしょうか?わが家の陸奥A子comicsコレクションの絵と照合してみましょう。
「薔薇とばらの日々」(昭和60年:雑誌掲載年)
カレンダー(右)は漫画(左)の原画ではなく、新たに描かれています。少女たちの顔がより勝気になっていますね。
「ため息の行方」(昭和59年)
主人公が美術館の絵の中に入りたいと夢見る場面です。色がつくとより幻想的です。肉筆のネームがいい味を出しています。
「こんぺい荘のフランソワ」(昭和56年)
主人公が絵本作家になる夢を再確認する重要な場面(左)。漫画の方が表情に驚きがあり、ストーリーを感じさせます。イラストは一枚の絵として完結していますね。洗練された色使い(右)。
同上
四十年(よそとせ)前 にせんななひやくゑんの本 高価なりしよ 懐かしき本 snowdrop
今は昔ですね。別の歌友さんの一首を思い出します。
永井陽子全歌集はちじふきうまんゑんAmazonといふ不思議の国に 冨樫由美子
(google search)
昭和56年(1981)は高度成長期にあるとはいえ、若者はまだ貧しかった時代。(綽名からして)浮世離れしたフランソワも、節約とアルバイトの日々を送り、やっとこさ絵本コンクールに応募して佳作に入ります。四回にわたって連載された、リアリティを感じさせる中編漫画でした。
「天使も夢見るローソク夜」(昭和57年)
それがわずか一年後、別のオムニバス・ストーリーの主人公はあっさり旅のエッセイ大賞を受賞。読み切りという短さにもよるでしょうが、バブル期のふわふわした空気を先取りしていたのかもしれません。今の若者なら、佳作に感涙したフランソワの方に共感するかもしれませんね。新しく描かれたカレンダーにはパリではなく、ありふれた街角が見えます。
「冬の夜空にガラスの円盤」(昭和53年:1978年)
おお、大正からへ昭和タイムスリップしてきた中原徹太郎クン!
中原中也と河上徹太郎のミックスキャラでしょうか。少女がラジカセで聴いているのは「ペイネ愛の世界旅行」(1974年)です。
中原徹太郎は大正時代、主人公の祖母、文子と親しくしていました。
若き日の文子さんが切ってくれた庭の薔薇、「桜鏡」かもしれません。
連衆さんが教えてくれた、明治のころ日本に伝わった可憐な薔薇です。
フランス語名はDuchesse de Brabant(ブラバン公爵夫人)、
まるでプルーストの小説のゲルマント公爵夫人みたいです。
モデルになった伯爵夫人は文子さんより少し年配でしょうが。

連衆さんのおかげでsnowdropの詠みし一首
大正の桜鏡のばらの庭祖母の鋏の音のすずしき
桜鏡(左)、グレフュール伯爵夫人(右)
(google search)
次の漫画に移りましょう。なめとこ山に眠る登山青年の、
その弟の名は寺沢賢治。明らかに宮澤賢治のパロディですね~。
陸奥A子とは好きな作家がかぶるので、よけい惹かれるのかもしれません。
「たとえばわたしのクリスマス」(昭和51年)
主人公が明治~大正時代にタイムスリップする漫画もあります。
銀の匙を磨いていると不思議な事が…中勘助は出てきませんが。
「まぼろしの銀の匙」(昭和56年)
古い写真が印象的に使われた大人向きの作品も。
「りぼん」ではなく「ヤングユー」掲載作です。
かつて高校生から大学生を読者層にしていた「りぼん」は、
snowdropが高校生になった頃、小学生向きの雑誌に方向転換します。たとえば、
「なきむしメルヘン」の赤座ひではるが、「ブギウギようち園」をヒットさせました。
左のギターの少年はスナフキン(1970年代のアニメ)とキャラかぶってますね…💦
(google search)
閑話休題。陸奥A子は小学生や幼稚園児を主人公にした漫画を描く一方で、
もっと大人女子向けの「ぶーけ」や「ヤングユー」でも活躍しました。
描線が簡潔になり、洗練されて、カレンダーの画風に近づいています。
乙女が恋する相手は、78回転のレコードを聴く高齢の紳士です。

「記憶のダリア」(平成6年:1994年)
君と見て一期の別れする時もダリヤは紅しダリヤは紅し 北原白秋
真盛りを過ぐれば花のいたましくダリヤをぞ切るこの大輪を 若山牧水
ダリアの代わりに葉牡丹でsnowdropの詠める一首
むらさきの血潮の染むる葉の碧(みどり)変容(メタモルフォシス)即ち恍惚
green leaves
dyed with
purple young blood
the metamorphosis
is equal to ecstasy
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