最高のお洒落(noir chic)


数年前からはまっている「オスマン帝国外伝」、現在シーズン4が再放送中だが(BS日テレ週日14:30から)何回見ても見ごたえがある。準主役のヒュッレムは、更年期のころに役者が交代した。ウクライナの赤毛の乙女の面影は、髪の艶に残っている。ドレスの色はシックになり、首回りを隠すようにはなったがそのぶん襟刳りは大きく、熟年の魅力にあふれている。

子供を産めなくなったヒュッレムをいたわるスルタン夫の寝所にハレムの若い女性を送りこむ妻の胸中は…


ヒュッレムを演じるのはヴァーヒデ・ペルチン(Vahide Perçin)さん。トルコ版「マザー」のドラマでは、優しい祖母役だった。こうして笑顔を並べてみるとヒュッレムには母性だけでない愛嬌、驕慢さ、したたかさが感じられる。名優とされる所以である。

先週、宮廷中が海軍提督の喪に服す場面で黒の装いの美しさに驚嘆した。カラフルな宮殿のなかで煌めく黒の存在感!

喪中は首飾りを着けないのが決まりらしい。
襟の形でから、その人の立場や性格がよく分かる。そういえば母は「黒は最高のお洒落」と言っていた。
京都の呉服問屋出身の画家である尾形光琳の妻は、色とりどりに着飾った女性の集いに黒の着物で現れ誰よりも鮮やかな印象を残したという。

黒服の男たちは、ターバン飾りに意匠をこらす。
喪服をまとっていても掴み合いの喧嘩になる兄たちを心配する末っ子のジハンギル。思慮深い彼に健やかな身体さえあれば…

心から純粋に悲しんでいたのは海軍提督の実娘のミフリュニーサだけかもしれない。イスラム教の「アーミン」は、キリスト教の「アーメン」と同じ意味。アラブの人名の一つイブラヒムは、旧約聖書のアブラハムに当たる。そもそもコーランのアラビア語と旧約のヘブライ語が近い言語なのだ。
船中でもとめた海の男の人形(2000年代)
飛行機も船も愛せしお父様どこより家を愛したまひぬ
mon pèrequi aimait avion et bateau,il aimait le plusnotre maison


海軍提督の棺にターバンが載っているのには驚いたが、エリザベス女王の棺にも王冠が載っていたではないか。
ラヴェンナのモザイク画の絵葉書
白山羊さんからお手紙着いた、黒山羊さんたら…♪聖書には、よく白い羊と黒い羊が登場する。それぞれ善悪を象徴しているのだが、動物界においては、黒羊は白羊より乱暴者だという。人間が飼いならし、家畜化したのが白い羊である。白い色が好まれたわけではない。おとなしく群れていられる個体を選び続けると毛の色がだんだん白っぽくなっていったのだ。一種の遺伝子操作である。
『ジォット』同朋舎
白羊は人間の庇護を離れて生きてゆけない。黒羊のように、野性を残していないからだ。聖書で人は神に守られて生きる白羊たる事を求められる。
スクロヴェーニ礼拝堂壁画の白羊のやすらかな寝顔!↑けれど、黒羊のメランコリックなシルエットも魅力的だ。ジォットは白羊と黒羊をひとしく丁寧に描きこんでいる。
おまけ*シュタイフ社の仔羊
(画像はお借りしています)
Bonus*Ram of Steiff
おのが身と杖を羊の門として神のねむりは今宵も浅く
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