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馬栗(horse-chestnut)

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今年の五月、近所にマロニエの花を見つけたと思ったら
橡(栃)(トチ)の花だった。
同じような驚きを覚えた作家がいる。
巴里土産として知人からマロニエの葉っぱを貰った小沼丹は
神宮球場へ行く道で、橡の木を見た。

In this May, I was surprised to find marronnier-like tree
in my neighborhood.
Some Japanese writers also was surprised.
For example, Tan Onuma found a Japanese horse chestnut
on his way to Jingu Stadium.
Its leaves resembled those of marronnier,
which had been given to him as a souvenir of Paris.


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「その日、何気無く橡の木を見上げて吃驚した。
七枚の小葉を持つ『巴里のマロニエの葉』が
どっさり茂っているのである。マロニエと橡は
兄弟分だから葉が似ているのは当然なのだが(…)」

小沼丹「マロニエの葉」(『小さな手袋』所収)


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小沼丹の友人の庄野潤三は、イギリスでマロニエを見た。いや、
マロニエはフランス語、英語ならホース・チェスナットである。
日本のトチを小沼は橡、庄野は栃と表記する。

「白い花を着けた大きな木がいくつも見える。それは
ホース・チェスナット、日本の栃の木、フランスのマロニエ
だと教わる。木はすべて若葉。」
庄野潤三『陽気なクラウン・オフィス・ロウ』


In England, Junzo Shono, a friend of Tan Onuma,
saw marronniers : horse-chestnuts (in English).


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ホース・チェスナットは西洋栃木(セイヨウトチノキ)、
あるいは「馬栗」。


馬栗と聞けば田舎の土にほふ都の美女もむかしは童

the word "horse chestnut"
smells like country's soil
a beauty in Paris, marronnier
was a country girl?

馬栗の落ちる季節になつかしむ未だ見ぬ街やはらかき草



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栃の実は見当たりません。。。(9月29日)


(All Rights Reserved)





by snowdrop-momo | 2021-09-30 07:00 | Summer(夏の便り) | Comments(2)
Commented by desire_san at 2021-10-02 12:42
こんにちは。
マロニエの花は、私もいろいろ思い入れがあります。

西欧では、マロニエは新緑の季節を迎えると、ほんのり赤みを帯びた、白い花を咲かせます。まるで鈴をたくさんつけているかのようです。

ゴッホは最晩『花咲くマロニエの枝』徒いうすてきな作品を残しました。この作品と対面したとき、その澄み切った美しさに心打たれました。厚塗りなのになぜか透明感があり、濃淡のある葉は瑞々しく、咲き誇る白い花もキャンバスから香り立ちそうな柔らかな空気が漂っている作品で、マロニエの花の魅力に魅せられました。




Commented by snowdrop-momo at 2021-10-03 11:31
*desireさん

こんにちは。
マロニエはパリで見たことがあるだけです。
雨の多い春で、寂しい記憶があります。
晴れたら、鈴をふるように賑やかに見えたことでしょう。

美しい絵画作品を教えてくださってありがとうございます。
ゴッホの晩年の白の使い方を考えたことがありますが
こんな素晴らしい作品もあったのですね。
実感のこもったご感想、私もじかに見てみたいです。

この週末、ようやく金木犀が香り出しました。
関東はすでに9月に開花したでしょうか。
どうぞよき週末をお過ごしください。