
白鳥めきたる辛夷
賢治の短歌を読み返していて、好きな一首の先駆形に出会うのも嬉しい。
けはしくも/刻むこころのみねみねに/かをりわたせる ほほの花かも(大正6年)
険しくも刻むこころの峯々にうすびかり咲くひきざくらかも(大正6年異稿)
けはしくもそらをきざめる峯々にかがやくはなの芽よいざひらけ(大正7年削除稿)
さながらにきざむこころの峯々にいま咲きわたす厚朴の花かも(大正10年)
さながらにきざむこころの峯々のなかにもここはもなかなかりしか(大正10年異稿)
賢治にとって核となるイメージは「こころの峯々」だった。
そこにひらくのは何の芽、何の花であるべきだったのか。
のちの童話(大正12年作)の挿入歌において、最終的に選ばれたのは
エキゾチックな響きのマグノリアだった。
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マグノリアとは、辛夷、木蓮、朴の総称である。花びらは鳥の羽を思わせる。
おまけ ♪ ラヴェル「天国の三羽の鳥」
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