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エミリと式子 下(two poets3)


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エミリと式子、国も時代も遠く離れた詩人と歌人が
うた合せをしたなら…(お題は「虫」)

Further in Summer than the Birds Emily Dickinson


Further in Summer than the Birds
Pathetic from the Grass
A minor Nation celebrates
It's unobtrusive Mass.

No Ordinance be seen
So gradual the Grace
A pensive Custom it becomes
Enlarging Loneliness.

Antiquest felt at Noon
When August is burning low
Arise this spectral Canticle
Repose to typify

Remit as yet no Grace
No Furrow on the Glow
Yet a Druidic Difference
Enhances Nature now

鳥たちよりもさらに夏遅く  エミリ・ディキンソン

鳥たちよりもさらに夏遅く
草むらのかげで悲しげに
ちっちゃな群れが挙行する
人目につかぬミサを。

(…)

八月が燃えつきようとする頃
真昼というのにたいそう古めかしく
この幽霊のような聖歌はわき上がり
寂滅を表象する

恩寵はまだ取り消されたわけではなく
輝きにはさしていない
(…)

(亀井俊介の訳から一部を引用)(『対訳 ディキンソン詩集』岩波文庫)



アマーストの秋(O.H.ヒッチコック)(wikipedia)
Autumnal Scenery, lithograph after Orra White Hitchcock


引用部分の最終行で「」と訳されたのは ”Furrow” という単語です。
訳注によれば、furrowとは「畝と畝の間の溝」という意味だとか。
畝の影を光と対照させる感性は型にとらわれず、こまやかです。
この畝にひそんでいるのは、ちっちゃな群れをなすこおろぎです。

"Furrow" means the shadow contrasted with the Glow.
In these furrows live and sing a minor Nation, the cricket.



cricket and
pine cricket




跡もなき庭の浅茅にむすぼほれ露の底なる松虫のこゑ 式子内親王

entangled
in the cogon grass leaves
in the garden without tracks,
in the bottom of the dews
a pine cricket's cry

(Princess Shikishi, tr. by snowdrop)

人の足跡もない庭に茂る浅茅の露の底から
ほろほろとたちのぼる松虫の声…
まつむしはすでに誰をまつことも諦めたかのよう。
詩よりずっと短い和歌の半ばを草の描写が占め
ただか細い声が聞こえてくるばかり。

"Matsumushi (pine cricket)" implies "matsu (wait) ".
While Emily simply depicts "from grass",
Shikishi "entangled in the cogon grass leaves".
The latter's grass encloses the insect.




式子内親王が蜘蛛に咬まれる歌物語を作ったことがあります。
(snowdropのフィクションです)

いっぽう、エミリにも蜘蛛をうたった詩があります。



The Spider holds a Silver Ball (蜘蛛が銀の玉をかかえている)
In unperceived Hands –(目には見えない手で – )
And dancing softly to Himself(そして、そっと一人踊りながら)
His Yarn of Pearl – unwinds – (…)(真珠の糸を繰り出す) (…)

(the first stanza of a poem by Emily Dickinson, tr. by snowdrop)


エミリと式子 下(two poets3)_c0345705_10250961.jpg

(2017年撮影)


華厳経では、微塵のなかに世界がすべて含まれていると説きます。
毘盧遮那仏が帝釈天につくらせた宝網である因陀羅網においては、
「結び目にある珠玉が互いを映し合い、映った珠がまた映し合うという
無限の関係によって、華厳の無尽が説明される」のだとか。
宮沢賢治の「インドラの網」がこれに当たります。
英語では、これをパール・ネットワークと呼ぶそうです (2015年記)。

Avatamska sutra explains that a monado includes whole world.

Indra's net (the net made by Indra by orders of
Vairocana Buddha
to which Miyazawa Kenji refferred) has a multifaceted jewel at each vertex,
and each jewel is reflected in all of the other jewels.
This image shows the infinite world of
Avatamska sutra,
which is called “Pearl network” in English.



(2017年撮影)

 

エミリと式子 下(two poets3)_c0345705_10524505.jpg




空高み真珠(まだま)のやうな白雪は見えぬ糸もて繰り出されくる

Heaven unwinds his yarn of pearl-snow (inspired by Emily)




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Trois Petits Flocons(left)*Neige par Nakatani Ukichiro(right)


(All Rights Reserved)







by snowdrop-momo | 2019-02-03 20:06 | Winter(冬の便り) | Comments(10)
Commented by snowyspring3 at 2019-02-04 16:19
蜘蛛の巣の網にかかった白い雫は宝玉のよう。
日米両国の女流詩人たちの心も捉えたのですね。
私は不勉強ですが、蜘蛛の巣にかかった珠すだれは私も写真に撮ったことがあります。
惹かれます。

ファミリア神戸店の情報ありがとうございます。
他にも色々教えていただいてありがとうございます♪

PS.そう言えばですが、私もエミリー・ディキンソンの詩集を持っていたことがありました。
Commented at 2019-02-04 16:21
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by snowdrop-momo at 2019-02-05 20:55
*snowyspringさん
蜘蛛の巣には洋の東西を問わず
人の心を引きつけるものがありますね。
私の拙い写真はカメラが偶然撮ってくれたようなものです。
膨大なお写真を撮ってこられたsnowyspringさん、
きっとアーカイヴにお宝がどっさり!

こちらこそ、以前ファミリアのことを教えていただいたおかげで
大丸のお隣の店舗に気づくことができました。ありがとうございます。

エミリの詩、お好きだったんですね。snowつながりの上に
またひとつ接点が増えましたね。どんな詩がお心に残っているのでしょう。。。
Commented by snowdrop-momo at 2019-02-05 21:00
*立春の日の鍵コメさん
岩波文庫のモノクロ図版に心惹かれて
カラー図版を探してみました。
アマーストの風景をいっしょに眺めてくださって嬉しいです。

おかげさまでトライアングルつながりに気づかせて頂きました。
ありがとうございます。
お水取りまでにまた雪ん子の声が聞けるでしょうか***
Commented by pikorin77jp at 2019-02-06 13:57
蜘蛛の巣の写真 いずれも素晴らしいですね。雨の雫や 引っ掛かった落ち葉 最後の蜘蛛の巣は 金属のトンネルのようで しばらく見入ってしまいました。
Commented at 2019-02-06 18:21
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by snowdrop-momo at 2019-02-06 21:17
*pikoさん
すばらしいニュースにイイネさせて頂きました。
コメントくださってありがとうございます。
ぴこさんにも蜘蛛の巣や落ち葉のお写真がありましたね。
「金属のトンネル」、面白い表現ですね!新しい歌を詠んでみたくなります。
Commented by snowdrop-momo at 2019-02-06 21:24
*2月6日の鍵コメさん

原書から入るエミリーの詩、素敵ですね。
エッセンスがストレートに伝わってきているのが感じられます。

この歌手は高校時代の友人が好きで、カセットにダビングしてくれました。
この歌は入っていなかったのですが、いい歌ですね。
詩だけでなく訳詞もお上手です!
教えてくださってとっても嬉しいです。ありがとうございます。

コンデジながら頑張ってくれています。頼もしい相棒です。

Commented at 2019-02-09 15:41
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by snowdrop-momo at 2019-02-09 18:22
*2月9日の鍵コメさん

寒い一日でしたね。こちらは、ゆきやこんこ*とはゆきませんでしたが…^^

*雪のふるしずかな朝に生まれたの*

おたがい長生きしていると、たくさんの本が身の回りに集まってきますね。
連休は本ごもりしましょうか。。。