しをりの話(Reading Week has begun)

10月27日から11月9日は読書週間です。(7月撮影)
Reading Week*October 27th - November 9th

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人生の栞は出逢ひ、別れ、旅、心に刻むやうに詠む歌


le signet de la vie

c ’est la rencontre, la séparation,

le voyage, et

tanka poème que je compose

pour graver dans ma mémoire




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モンゴルの栞には、宵待草の切手と草花の押し花が挟まれています(右上)。
それを真似てこさえたのが、五月の楓と銀杏の押し葉の栞。
その左隣には琵琶湖の栞、さらに隣にはエジプトのパピルスの栞、
室生寺の散華、フィレンツェの紙工房の栞…
展覧会のチケットも裏打ちして、リボンを通して、栞にしていましたっけ。

Like a Mongolian bookmark with a stamp and pressed flower,
snowdrop made several bookmarks with pressed leaves.
The bookmark of Lake Biwa, that of papyrus,
that of marble paper, that in the shape of a lotus petal,
one of the exhibition tickets lined and threaded with ribbon.



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(2011年)


本を読むときは、伴侶となる栞(しおり)を選ぶのも楽しみの一つです。
栞の歴史を、新聞の記事をたよりに繙(ひもと)いてみると…西洋では
修道僧が聖書のみ言葉に直接触れないよう、聖衣の一部を頁に挟んだのが始まりでした。
印刷本が普及すると、仮綴じの本を開くペーパーナイフが栞代わりになりましたが、
錆びると紙を傷めてしまうので、シルクリボンの栞が使われるようになりました。
やがて本の紙が薄くなると、高価な絹に代わって厚紙の栞が普及しました。

The bookmark was originally a part of monks' clothes
in order not to touch the sacred words of the Bible.
When the printed books spread,
the paper knife was used as the bookmark,
whose rust damaged the paper and the silk ribbon replaced it.
Then the expensive silk one was replaced by the thick paper one
as the paper of book became thinner.



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表装の余り布でつくられた栞(2015年)


日本では、『枕草子』に出てくる「けふさん(夾算)」が初出だとか。
薄く削った竹や木を裂いて上部を糸で巻き結んだものだそうです。
江戸時代に仮名草紙などを楽しんだ人々は、こよりを栞としました。
朝顔の花や銀杏の葉を挟む人もいました。
草花は紙魚(しみ)を寄せ付けないと考えられたのです。

In Japan, the bookmark is referred by Sei Shonagon for the first time.
It is said to be the thin chips of bamboo or tree whose upper parts are bound with thread.
In the Edo period, those who enjoyed reading books used the paper string as the bookmark.
Some inserted the pressed flowers (e.g. morning glory) or ginkgo leaves.
They thought the grasses and flowers keep the bookworm off.


こより(google search)*paper string

「こより 和紙」の画像検索結果

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(2016年秋)


「しおり」という言葉を造ったのは、修学院離宮で知られる後水尾天皇でした。
水戸光圀が絹で包んだ紙を献上し、「本を読むのにどうぞ」と申し上げたところ、
帝は西行の歌を引いて、これを「枝折(
しおり)」と呼んだのだとか。

吉野山去年(こぞ)のしをりの道かへてまだ見ぬかたの花を尋ねむ 西行

しをり(枝折)」とは、道しるべに木の枝を折ることです。
本にしおりを挟むのは、本の奥へと延びてゆく道の半ばでしばし佇むことです。

The word "Shiori (bookmark)" was coined by Emperor Gomizunoo(1596-1680).
The paper covered with silk that Tokugawa Mitsukuni presented to the emperor was called "Shi-ori" based on a waka poem by Saigyo(1118-1190).
In Mt. Yoshino, Saigyo would break branches ("Shi-oru") as the landmarks for next year.
Slipping a bookmark between the pages is
standing still for a while on the way to the last part of the book.


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池大雅が秋雨の夜、西行の枝折の歌を思いながら描いた吉野山
Mount Yoshino that Ike no Taiga (1723-1776) painted
while remembering the waka poem on Shiori by Saigyo


 西行の枝折をふまえたと思しき、素敵な栞の短歌を最後にどうぞ。
 この歌に出てくる『山家集』とは、西行の歌集です。恋の歌は百首以上!
「すぐれし恋のうた」とは、どの歌でしょう…栞がないと分かりませんね!


Here is a tanka by Kawata Jun (1882-1966) based on Saigyo's waka.
Sanka-shu is Saigyo's private anthology including more than 100 love songs!
Which one is the one Kawata Jun chose ? We need his bookmark!


山家集に一首すぐれし恋のうた君に見せむと栞を挿む  川田 順

there is a wonderful love song in Sanka-shu, which
I wanted to show you and slipped a bookmark there
― Kawata Jun


「西行物語絵巻」の画像検索結果

「西行物語絵巻」(google search)
from Illustrated Scroll of the Story of Saigyo

栞の歴史については日本経済新聞の記事を参考にしました。
猪又義孝「世界のしおり形とりどり」(日経文化 7月24日)

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平安時代にたくさん造られた紺紙金字一切経、平安風の栞

Sutra in the Heian period and bookmark of Heian design

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by snowdrop-momo | 2018-11-03 17:23 | Autumn(秋の便り) | Comments(5)
Commented by 1go1ex at 2018-11-03 21:01
ずいぶん多彩なしおりをお持ちですね。
snowdropさんは「物持ちのいい」タイプなんですね。
展覧会のチケットをしおりにするとは、素敵なアイデア!
見るたびに記憶が蘇りそうです。
しおりの歴史、興味深く読ませていただきました。
京都国立博物館で開催中の刀剣展、大変な人気だそうで。
興味あるんですが、混み合っているみたいなので諦めました。
Commented by snowdrop-momo at 2018-11-04 20:40
*1go1exさん
展覧会のチケットを捨てがたくて作った簡易しおり、
ずいぶん前から、そんなまめさは無くなってしまいました。
展覧会で見た絵と、図録で見た絵の記憶の区別もつきにくくなってきて…
それでいて、20年前の展覧会で見た絵が2年ぶりのように感じられるのです。
同じ画家の、久々の回顧展なんですけど…
京博の刀剣展、きっと若い人たちも沢山来ているのでしょうね。
お向かいの三十三間堂だけでも、今月中に行きたいと思っています。
Commented at 2018-11-05 17:26
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by snowdrop-momo at 2018-11-05 20:52
*11月5日の鍵コメさん
ていねいにご挨拶くださりありがとうございます。
栞のおはなし、楽しんでくださって嬉しいです。
皆さんが喜ぶフォトしおり、さぞ素敵でしょうね。
これからもよろしくお願いします。

Commented by 1go1ex at 2018-11-08 08:54
京博の刀剣展、若い女性が圧倒的に多いそうですよ。
名刀の個性をキャラクターで表現したゲームが
刀剣ブームに火をつけたらしいです。
その話を「日曜美術館」で知るまでは私も
刀剣なんていう地味なものになんでそんなにたくさん
人が集まるの? と不思議に思っていました。