白の画家、ゴッホ(Painter of White, Van Gogh)

「雪景色 広重 切手」の画像検索結果

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天からの画家の手紙か寧楽(なら)の雪 (2月1日撮影) (歌川広重の切手*google search)

Est-ce que des lettres du peintre des cieux , la neige en Nara? (le1 février)



ゴッホ「雪景色」*Snowscape by van Gogh


snowdropは、ゴッホの画集を一冊も持っていない数少ない美術愛好家の一人です。
それは、ゴッホの絵を長い間見つめていることができないからです。
それが、或るブログでゴッホの雪景画を見て、展覧会に足を運びたくなりました。

Snowdrop is one of the rare art lovers who do not have a book of paintings of van Gogh, because she cannot observe his paintings for a long time. And yet one of his snow landscapes in one of her favorite blogues made her visit his exhibition in Kyoto.


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京都へ出かけた1月下旬、雪は降りみ降らずみ…
ゴッホの夢みた日本の青空と、ゴッホの愛した日本の雪とが交互に訪れました。

It snowed off and on when she visited the exhibition in Kyoto in January.
The blue sky Gogh dreamt and the white snow he loved, both of them appeared alternatively.




「mountain village in japan」の画像検索結果

ゴッホ「雪景色」と広重 「東海道五十三次の内蒲原夜の雪」(pinterest)(広重は出品されていません)
snowscape by Gogh(left) and by UTAGAWA Hiroshige (right)


日本の風景を求めて南仏アルルへ旅立ったゴッホを迎えたのは、白一色の雪景色でした。けれど、ゴッホはそこに日本の雪景の版画を連想して感激します。

Gogh traveled to Arles in pursuit of Japanese landscapes, where he saw a white snowscape. It was for him a Japanese woodprint representing the snowscape!


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ゴッホ「糸杉の見える花咲く果樹園」
Orchard in Blossom, Bordered by Cypresses, Gogh


やがて春、白い果樹の花々が咲き始めました。まさに桃源郷!ゴッホの日本の夢はじつは「白」から始まったのです。

The spring has come. The fruit trees began to bloom like Japanese white plum, peach, and cherry blossoms. Here is the Utopia! Gogh's dream of Japan started from "white".


「じゃがいも を 食べる 人」の画像検索結果
ゴッホ「じゃが芋を食べる人々」(pinterest)(出品されていません)
The Potato Eaters, Gogh


そもそもゴッホは「黒」からスタートした画家でした。牧師を父とし、かつて聖職者を志した青年は、貧しき人々を暗い色で力強く描きました。やがてパリに出た彼は、色とりどりの印象派絵画や日本の浮世絵と出会いました。彼は日本の色彩を求めて、さらに南仏アルルへと旅立ちます。そして、白い雪と花に迎えられたのでした。

Gogh had started with "black" in the first place. A young man whose father was a priest originally aimed to be in holy orders. He painted the poors with dark colours. He went up to Paris and met colorful Impressionist paintings and Ukiyo-e. Moving to Arles after Japanese images, he was greeted by white snow and flowers.


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ゴッホ「アイリスの咲くアルル風景」(上)尾形光琳「燕子花図屏風」(下)(wiki)
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「北斎  燕子花」の画像検索結果

北斎「燕子花」(pinterest)(青が退色し、輪郭線がよく見える)
(光琳と北斎の燕子花は出品されていません)
Iris by Gogh, Korin, or Hokusai. Hokusai's blue is faded and the outlines are seen better.


白い春が過ぎ、青いアイリスの咲く夏がやって来ました。ゴッホが「日本の夢」とたたえたアルル風景、何かに似ていませんか。ほら、手前の青いアイリスと金色の小麦 ― 光琳のカキツバタの金屏風を思わせます。ゴッホは画廊か雑誌のなかで、この屏風を見たことがあったのでしょうか。それとも、輪郭線のくっきりした北斎の版画を見たのでしょうか。輝かしく鮮やかなるジャポン!現実の日本は、透明な空気とは正反対の湿気に包まれた国なのですが…

White spring passed into blue and yellow summer. This landscape of Alres that Gogh praised "a dream of Japan" resembles Iris by Korin or Hokusai ― the former's colour combination of gold and blue, and the latter's outlines of flowers. Brilliant Japon!But in reality, Japan is a humid country far from the clear and transparent air.


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ゴッホ「ひまわり」(部分)*Sunflowers(google search)(出品されていません)


 盛夏、ゴッホは友人のゴーギャンとともに黄金のひまわりを描きました。日本の版画家(画師、彫師、摺師)が共同制作するように、自分たちも芸術の共同体を営んでいるのだ!有頂天になるゴッホ。
 しかし、現実は ― 日本の版画制作は完全な分業体制で、今でいうコラボとは異なっていました。また、ゴーギャンはゴッホのような夢想家ではありませんでした。やがて共同生活は破局を迎え、ゴッホは耳切り事件を起こし、サン・レミの病院に入院します。


 In high summer, Gogh painted a series of sunflowers in yellow with his friend Gauguin. Gogh was in the skies because their cohabitation seemed to him the community of Japanese woodprint artists.
 But in fact, Japanese woodprint was produced not by such a collabration but merely by a division of labor. And Gauguin was not a dreamer like Gogh. Soon their cohabitation collapsed and Gogh entered a mental hospital in St. Remy.


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ゴッホ「草むらの中の幹」(部分)* Tree trunks in the grass by Gogh(detail)


 ゴッホの絵から、黄色が薄れてゆきます。代わりに表に出てきたのが白でした。この絵の草原を埋めるのは白い花ばかり。わずかに木の根元に黄色いたんぽぽが、夢の名残のようにひっそり揺れています。
 白は、しかし、ずっとゴッホに寄り添ってきた色でした。彼のひまわりの連作は、チューブから絞り出した黄の絵具一色ではありません。濃淡さまざまな黄色を操るには、白絵具もたくさん必要だったはずです。

 In Gogh's paintings the yellow began to retreat and the white has emerged in turn.This grass is full of white flowers and only several yellow dandelions bloom around the bottom of a tree like the obscure traces of his dream.
 The white, however, was the colour that had been beside him from the beginning. His sunflowers were painted not only with the yellow but also with the white mixed into the various tones of yellow.


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ゴッホ最晩年の「星月夜」*The Starry Night(MoMA HP)(出品されていません)


 ゴッホは心の奥底ではずっと、白の清らかさ、白の安らぎを求めていたのかもしれません。
 死の一年前に描かれた「星月夜」では、黄色い月と白い星が拮抗しています。左手前には黒々とした糸杉、右奥には青白い教会堂…糸杉は死、教会は救済を象徴しています。
 黒の画家(じゃが芋を食べる人々)から黄の画家(ひまわり)、そして白の画家(星と教会)へ……ひょっとしてゴッホは、失われた聖職者の夢を、無意識のうちに色でかなえようとしていたのでしょうか。

 Gogh might have seeked for the pure and peaceful white at the back of his mind.
 In The Starry Night painted one year before his death, the yellow and white coexist. Black cypresses are the symbol of the death, and a pale church the salvation.
 From a painter of the black(The Potato Eaters), that of the yellow(Sunflowers), and to that of the white(The Starry Night)…Gogh might have wanted to recover his lost dream to take in holy orders through the colours unconsciously?


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平安神宮の大鳥居、雪山の麓の金戒光明寺
Torii (right), Kyoto Municipal Museum of Art (middle), and Temple (left) in the snow


3階のゴッホ展に続き、4階の日本の近代絵画を見ながら、ゴッホの夢の日本と、現実の日本について思いを巡らせました。ああ、ゴッホがもっと長生きしていたら!あるいはフォーヴィズムの先駆者として名声を得、大正時代の日本人画家たちの訪問を受けていたかもしれないのに!(3階には、ゴッホの墓参りをする日本人の写真なども展示されています)

In this exhibition, you see the photographs of Japanese artists who visited his grave since the Taisho period. Snowdrop thought about the non-coincidence between Japan in Gogh's dream and real Japan. Helas, if the painter had lived longer! He might have gotten the fame as a pioneer of Fauvisme and might have received visits from Japanese painters!


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京都国立近代美術館からのぞむ京都市立美術館と南禅寺
Kyoto Municipal Museum of Art (left) and Nanzen-ji Temple (right) from MoMA, Kyoto



ゴッホが日本を夢見てアルルへ旅立ったように、多くの日本人がヨーロッパを夢見て軽井沢などに滞在しました。ゴーギャンから受け入れてもらえなかったゴッホの芸術家の共同体構想は、のちの武者小路実篤や志賀直哉らの「新しい村」に通じるものでした。

While Gogh traveled to Alres seeking for Japan, not a few Japanese stayed in Karuizawa seeking for Europe. The community of the artists that had been rejected by his friends was in some way realized in Japanese "New Village" founded in 1918.▶https://en.wikipedia.org/wiki/Atarashiki-mura

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星ふる夜 天使の声のふりつもり かそけくうたふ日本の雪を
in the starry night
angels' voices also fall
singing faintly
Japanese snow
which van Gogh dreamt
「vincent van gogh sterrennacht」の画像検索結果



立春に詠める*on the first day of spring
あたらしく生(あ)れし命をことほぎて画家の遺せし絵の花の白
celebrating
a new life of his nephew
the painter
painted white flowers
like Japanese cherry blossoms

「アーモンドの花 ゴッホ pinterest」の画像検索結果

ゴッホ「花咲くアーモンドの枝」(出品されていません)
Almond blossoms by Gogh(pinterest)


憧れのジャポンをパッチワークしてゴッホは描く錦絵の夢
patchworking
the admired Japon
the painter, Gogh
painted and painted
his dream like colorful ukiyo-e

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by snowdrop-momo | 2018-02-04 17:31 | Winter(冬の便り) | Comments(8)
Commented by pikorin77jp at 2018-02-04 19:28
つい最近 ゴッホの絵が日本の浮世絵の影響を色濃くうけていると、テレビでみたばかりでした。マイセンが 古伊万里の影響を受けているように 日本の色彩は 世界に大きく影響しているんですね。平安神宮すぐ近くにある美術館。ゴッホの絵を見た人は この鳥居の朱の色に あらためて 感動された方おおいのではないでしょうか。
Commented by snowdrop-momo at 2018-02-04 20:17
*pikoさん、コメントをありがとうございます。
pikoさんと私、同じ番組(Eテレ)を見たのかもしれません。
録画を眺めながら記事を仕上げました。とても参考になりました。
東洋と西洋が陶磁器をめぐって交流しているのも興味深いですね。
平安神宮の鳥居、展覧会の後、展望ロビーから眺める人が多かったです。
奈良の北部では2月1日だけ雪が…ぴこさんのところは大丈夫でしょうか。
Commented by desire_san at 2018-02-05 03:09
早速訪問させていただきました。
共感を感じながら読ませていただきました。
北斎が「燕子花」描いているのは初めて知りました田・
北斎も、尾形光琳の「燕子花図屏風」を見ていたのでしょうか。兀穂の「アイリスの咲くアルル風景」のアイリスの描き方は、北斎の影響でしょうね。

ゴッホが白い雪景色を書いたのは、アルルに着いて白一色の雪景色観た時が最初で最後だったと記憶しています。これこそ日本の風景と感じたのは、広重 の「東海道五十三次の内蒲原夜の雪」を見ていたので、日本のイメージと重なったのかもしれませんね。そのすぐ後の「糸杉の見える花咲く果樹園」の城の使い方は非常に上手でオシャレな感じがしますね。兀穂の傑作のひとつ「花咲くアーモンドの枝」でも、白を非常に効果的に使っています。

日本の画家の生活様式や現実とかけ離れたものを夢想し、アルルを南仏の日本と思い込み、浮世絵こそが自分の理想とする美術品のあり方を具現したものと誤解して、自分の絵を浮世絵のような作品と思い込んでしまったのは、ゴッホの思い込みの激しい画家だったからでしょうが、普通の人だったらありえないことだと思います。その点では似たところがあるゴーギャンとの出会いは、ゴッホにとっては不運だったのかもしれませんが、早く生まれ過ぎたことが最大の不運だったと私は思います。
Commented by snowdrop-momo at 2018-02-05 20:26
*desireさん
早速の夜更けのご訪問、ありがとうございます。過分のご誠意、いたみ入ります。
ゴッホのアイリスが北斎の燕子花に影響されていると思うとワクワクします。
ゴッホの雪景色、白がいちばん際立っているのは、アルル到着直後のこの一枚ですね。
入院中に描かれた「花咲くアーモンドの枝」は、アルルの白の蘇(よみがえ)りかもしれません。弟テオの息子、つまり甥の誕生を祝うこの絵には、清らかな喜びがあふれています。

ゴッホとゴーギャンが、思い込みの激しさという点で共通していたというお言葉は興味深いです。だからこそ惹かれ合い、ついで反発し合うようになったのでしょうか。

desireさんのブログのおかげもあって
今年は展覧会や文楽、お能公演などにじかに足を運ぶようにしています。
やはり生の体験はかけがえのないものですね。

ラヴェンナの貴記事も少しずつ拝読しています。自分自身があの街を旅した時に、貴記事が読めたらよかったのにと思います。当時の旅行日記をもとにした過去記事を、近日中にTBさせて頂くつもりです。その節はどうぞよろしくお願いいたします。
Commented by 1go1ex at 2018-02-07 15:44
ゴッホの画業を黒から黄、そして白へ…と分析した文章を読んだのは初めてです。
今までゴッホという画家に取り立てて興味を抱いたことはなかったのですが、
snowdropさんの記事は名案内役になってくださり、
一挙に距離が縮まった気がします。
読み応えがありました。
Commented by snowdrop-momo at 2018-02-08 06:11
*1go1exさん
励みになるコメントをありがとうございます。
ゴッホの絵は長時間見ていると目が回ってくるので
正面から向き合ったのは、じつは今回が初めてでした。
先入観がなかったのが良かったかもしれません。
「白の画家ゴッホ」は私の思いつきに近い仮説ですが、
誰かと作品との距離を縮めるお手伝いができたのなら、望外の喜びです。
Commented by milletti_naoko at 2018-02-11 04:39
昨年だったかゴッホに関するドキュメンタリー番組や映画を見る機会が、イタリアではしばしばありました。フランスでモネのジヴェルニーの睡蓮の庭や家を訪ねると、現在あるものは複製とのことですが、日本の浮世絵も多く、最近は何かにつけて、日本の浮世絵が印象派などの西洋画家に与えた影響についても学ぶことが多くあります。ブログのお友達のGuchiniさんの記事で、日本の浮世絵を西洋に紹介した方について読んで、とても興味深かったのはそのおかげかと思います。ひょっとしたら皆さん、同じ番組に触発されて記事を書かれたのかもしれないのではありますが。

すばらしいものが国境や時を超えていくのは、すてきなことですね。
Commented by snowdrop-momo at 2018-02-11 15:21
*naokoさん
いつもイタリア風物の見事なお写真をありがとうございます。
黄昏の雪山も雄大で美しいですね。
平昌の雪もテレビでご覧になっていますか。
海を越えて同じ光景を共有できるのも、すてきですね。

ひるがえってゴッホの時代、遥かなる未知の国への憧れのエネルギーの強さが、傑作を生んだのでしょう。
イタリアでもゴッホが注目される年だったのですね。Guchiniさんの記事、さしつかえなければ、そっと読ませて頂きたい気もします。

お忙しい中、足を運んでくださってありがとうございます。これから野の花が次々咲くのでしょうね。日本語とヨーロッパの言葉をめぐる新鮮な発見も。いつも楽しみです。