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転がる石 中(Rolling Stone2)

映画「イノセント」にちらりと出てくるピアニストを主人公にした歌物語です(by snowdrop)
スピンオフ!イノセント ♪

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「巡礼の年」より

リストの「エステ荘の噴水」は、私のレパートリーでも一番の難曲よ。でも、ほんとうは一番弾きやすい曲でもあるの。超絶技巧のピアニストでもあり、熱心なピアノ教師でもあったリスト。だから、ピアニストがどこで疲労の限界に達するか、よく分かっている。トレモロが延々と続いた後にスタッカートのフレーズがくれば、指の筋肉の違う部分を使うことになって、一息入れられるってわけ。

Although Liszt's Les jeux d'eau a la Villa d'Este is one of the most difficult pieces in my repertory, in fact, it is easy-to-play also. Beside being a virtuoso, Liszt was an excellent piano teacher. He understood very well when and where the pianist reaches the limit while playing. After long tremolos, the staccatos give our fingers a chance to rest.



「franz liszt piano」の画像検索結果


Young Liszt surrounded by female fans (one of them swoons)
リストのピアノ・コンサート。失神する女性ファンも見える(google search)


もっとも、彼が若かった頃の作品じゃ、こんな斟酌は抜きよ。見てちょうだい、この若き日の得意絶頂のリストの姿!まるで女性ファンに囲まれたジュリーかヒデキね!それが、長年色んな生徒にピアノを教え、歳を重ねるうちに、とんがってた角が取れて、丸くなって…まるで、転がる石のように。

But the pieces in his youth are more hard to play! Look, this young Liszt enjoying his greatest success(above fig.)! He looks like Elvis Presley surrounded by ardent female fans! And while teaching various students and growing old, the edges of his character have been rounded off like a rolling stone.

「liszt franz pinterest」の画像検索結果


老リスト*Old Liszt(pinterest)


リストの人生の後半は、坂道を転げ落ちる石みたいだった。愛しい子供を二人も亡くし、長年愛し合ってきた女性との結婚には横槍が入り、宮廷楽長の職も失って…ついには聖職者になった。甘やかな青年から、苦々しげな老人へ…人生という巡礼は決して楽なものではなかったのね。

 

The later years of Liszt was like the locus of a rolling stone. He lost two of his beloved children, could not marry his longtime lover, resigned from his post of Hofkapellmeister, and became an Abbé in the end. From a sweet handsome youth to a bitter old manthe pilgrimage of the life was never easy for him.



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なのに、不思議ね。この「エステ荘の噴水」を弾いていると、なんだか両手も、心も、軽くなってくるの。リストは坂道を転がる石というより、波にもまれた石だったんじゃないかしら。丸くなった石には苔もつかず、自由に水のあいだを漂う…ほら、ここの箇所。噴水の水の流れのようなフレーズが、目まぐるしく転調してゆくでしょう?主調や属調といった縛りにとらわれず、自由に、流れのままに…
ローリングストーンひとつ転がれば苔むすこともしがらみもなし

聖職者となった音楽家は、この箇所に聖書の言葉を書きこんでいる。「わたしが与える水はその人の内で泉となり、永遠の命に至る水がわき出る」(ヨハネ書4-14)もっとも、この曲の魅力は、変幻自在な音の戯れそのものにもあるのかも。


But, it is strange
this piece always sets my hands and heart at ease. I wonder if Liszt was like a stone buffeted by the seas rather than a stone rolling down a slope. A rounded stone drifting on the waves gathers no moss. Listen, in this part, several phrases like streams modulate kaleidoscopically, freely, regardless of the related keys.
Abbé Liszt wrote in the music a quotation from the Bible, “sed aqua quam ego dabo ei, fiet in eo fons aquae salientis in vitam æternam” Jn 4:14But the charm of this piece exists in les jeux d'eau et des sons (playing water and sounds) themselves, doesn’t it?




リスト「エステ荘の噴水」*イタリアのエステ荘の写真入り動画



↑ イタリアに住むNaokoさんのエステ荘の噴水の思い出


私たちイタリア貴族は、それぞれにエステ荘の噴水の思い出を持っている。石の女神像のたくさんの乳房から噴き出す水に目を丸くした子供の頃。心ときめく殿方と隠れん坊した青春時代。ここに集う紳士淑女も、ただ水の音の美しさと、それぞれの追憶に酔っているのではないかしら。未来に何が待っているか夢にも知らずに―。気になる?でも、ここでお話したら、映画のネタバレだって恨まれないかしら(笑)。

We Italian nobles have respectively the memories of Villa d’ Este. I stared at that stone goddess statue with many breasts spouting water with my eyes wide open in my childhood, and I played hide‐and‐seek with handsome gentlemen in the wide garden in my youth (entre nous, j' avais un béguin pour l'un d'eux)
Signore e signori in this salon also are absorbed in the beautiful sounds and in their own memories, without dreaming of their stormy futuredo you become curious? But if I tell you about their future here, will other readers call me a spoiler?(hu hu)


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ヴィスコンティの映画「イノセント」(L'innocente by Visconti)DVDより

明治時代に鍋島榮子が着用した小袖地のバッスル・ドレス(鍋島徴古館HP)
Bustle made of kimono material (c.1890s)

「鍋島栄子  バッスルドレス」の画像検索結果


(つづく)
(To be continued)
(All Rights Reserved)





by snowdrop-momo | 2017-01-28 20:25 | Winter(冬の便り) | Comments(6)
Commented at 2017-02-21 22:01
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented at 2017-08-05 20:43
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by milletti_naoko at 2020-05-22 01:12
記事を拝読し、音楽も聴いてみました。泉や噴水の水の軽やかなさざめきや美しい流れが耳に聴こえて、目に見えてくるような優しく、不思議な明るさを持ったすてきな曲ですね。と思ったら、書きながら聴いているうちに、ドラマチックな展開になってきました。リストの生涯は、私もつい最近、こちらの歴史番組で知って驚いていたところです。苦しみを経て、祈りの中に平安を見つけた、そう願いたいところです。

リンクでの記事のご紹介をありがとうございます♪
Commented by snowdrop-momo at 2020-05-24 06:34
*naokoさん
実際にエステ荘を訪ねたなおこさんに拙記事を読んで頂き、
この曲を聴いて頂けて嬉しいです。
「小鳥に説教するアッシジの聖フランチェスコ」(これもリスト作曲)と同じように明るい音域で始まりますが、やがて音域が低くなり、音に深みと厚みが増してきますね。
魂の深みから泉のように湧き上がる祈りを表しているのでしょうか。
リストは晩年の方が、音楽の純粋な美しさを追求する浄福を味わっていたと思えてきます(無調の「暗い雲」なども作曲しています)。

貴記事への近道を作らせてくださって、こちらこそありがとうございます♪ アッシジもティヴォリも、いつか訪ねたいです。
Commented by mariko789 at 2021-05-21 22:15
snowdropさん、こんばんは。
なんだか、とっても不思議な気がしてきました。
リンクして下さっているYouTube、これぞリスト。
私もブダペストのリスト記念博物館を投稿していて、
https://mariko789.exblog.jp/23644286/
今でもコンスタントにアクセスがあります。
イタリアのなおこさんのブログも毎朝、訪問しています。

渡辺獏さんが、昨日でしたか、村上春樹さんのIQ84
を読み始めたら、最初のページに「ヤナーチェク」と出てきて不思議な気持になったそうです。
目に見えぬ糸に手繰り寄せられて、こうしてお知り合いになれた気がします。

そうそう、『薔薇』のご入選の、はぐれさんは米国在住の方でした。
私もはぐれさんもsnowdropさんも英語使い。偶然にも。

snowdropさんはもちろんですが、桂かつらさんにも、またぜひご投句頂けますよう、お伝えくださいませ。
とても優れた取り合わせの句でした。
またお邪魔しますね(^^♪
Commented by snowdrop-momo at 2021-05-22 07:29
*marikoさん、おはようございます。
リスト記念博物館へのアクセスの一つはワタクシでございます(昨日)。
充実した貴記事を拝読できて、うれしかったです。

なおこさんのブログも接点でしたか!
なおこさんとも不思議なご縁を感じて、交流を続けています。

そうそう、村上春樹のヤナーチェクは「シンフォニエッタ」ですね!
チェコの音楽はさみどりと相性がいいようです。こんな俳句を見つけました。
草萌えてドボルザークが聞きたき日 草間時彦(ブログ「ふらんす堂編集日記」より)

はぐれさんもmarikoさんも英語にご堪能なのですね。
これから色々お教えください。 ^^♪