天使の贈りもの(フィレンツェのクリスマス)1

宿のテレビのスイッチをつければ、「ブォン・ナターレ(メリー・クリスマス)」と、パンドーロ(金色のカステラ)を手にしたおじさんが呼びかけてくる。本屋に並ぶ雑誌は、クリスマスの飾りつけや料理の特集でいっぱいだ。さあ、クリスマスがやって来る、20世紀最後のクリスマスが!

街の主な通りには、樅のガーラントやイルミネーションが架けわたされる。通りごとにデザインが違うのも楽しい。ドゥオーモとシニョーリア広場を結ぶメインストリート(Via dei Calzaiuoli)には、ヴェール形の照明がどこまでも続き、光の天蓋のよう。

共和国広場に面するカリマラ通りには、金モールや銀の玉を結び付けた樅の飾りが続く。ヴェッキオ橋の上はまるで商店街、レモンやオレンジをあしらった花綱や万国旗が冬の風にゆれる。一方、サンタ・クローチェ界隈では、青、赤、緑の星形の光が下町っぽい。ガーラントのように架けわたされた洗濯物まで色とりどりだ。

中央郵便局のアーケードには、花売りの露店が集まっている。どの花屋も、真紅のポインセチアやシクラメンをぎっしり並べ、石造りのアーケードが燃え立つようだ。観葉植物の葉を金、銀、青、赤に塗りたて、金銀モールの横に陳列してる店もある。朗らかな花売りの娘さんたち、吹きさらしなので厚着しているのだろう、ジャンパーがぱんぱんにふくらんでいる。

宿の向かいの老舗レストランの百日草も、樅の枝に変わった。緑の葉に赤いキャンドルが立てられ、金色の針金でできた「2000」の飾りがミレニアム気分を盛り上げる。ガラス張りの中庭にはシクラメンの鉢がいくつも置かれ、金や赤のボールを吊るしたクリスマスツリーが立てられる。
ホーリーショップに入ってみたこともある。ショーウィンドウの豪華な聖具や聖像には圧倒されるが、クリスマス前だし許されるかもしれない。店員はシスターだから、心静かに天使グッズを探せるかも、と…。
だが、店の奥でサッと人影が動いたかと思うと、眼鏡のシスターが灰色のベールをひるがえし、きびきびした足取りで迫って来るではないか。
「何をお探し?ここは全てタックス・フリーよ!」
チャキチャキした声で、手際よく品物を取り出そうとする様子に、早々に退散した。
(「天使の贈りもの2」へ続く)

