
『ラファエロ』(朝日新聞社)
イルカたちの曳く貝の舟で颯爽と海原をゆく女神の絵。
ルネサンス画家ラファエロ(1483-1520)が想像をふくらませ
描写した貝の舟に注目し、検証を試みた研究者がいます。
アメリカの美術史家ミラード・ミース (1904-1975)。彼は、
自由な発想と緻密な検証で、このからくり仕掛けの貝の水掻き板が
古代ローマに遡り、且つ19世紀の外輪蒸気船を予告すると述べます。
リケ女でなくても、ワクワクしませんか?
その絵が表紙になった原書を恩師に手渡された、遥かな夏が
終らないときめきの始まりでした。―

何年もかけて恩師をはじめ名だたる先生方と翻訳してきた美術書がついに刊行されました。恩師の師、ミラード・ミース先生の名著を日本語でお届けできて本当に幸せです。
The art book that three famous professors and I have translatedfor many years finally was published.I am happy to deliver Japanese version of one of great booksby Millard Meiss (1904-1975) to Japanese readers.

古典的名著にふさわしいクロスに金背文字、函入りの重厚な装幀です。
心よりお礼申し上げます。
The rich and solid binding suits to this classic book.
1999年にミラノのブレラ美術館で観た傑作(上図左上)
ピエロ・デッラ・フランチェスカ「モンテフェルトロ祭壇画」も
なんだか不思議な絵です。天井から吊るされている卵は一体…?
ミース先生は、背景に描かれた建築の細部や人物の推定身長から
鶏ではなくダチョウの卵(約15-20センチ)と検証します。
では、なぜダチョウの卵がこんなところに?🥚
えっ、ダチョウは目力で卵を孵すんですか!👀
剣を飲みこみ、鉄を消化できる強~い鳥?!⚔
そんなダチョウを紋章とするフェデリーゴの悲しい運命とは…
ウフィツィ美術館でみた夫婦(wikipedia)
祭壇画の右手前に跪く甲冑姿のフェデリーコ・ダ・モンテフェルトロ、
この「ウルビーノ公夫妻像」では赤い帽子と赤い服を着けていました。
つねに左側から描かれているのは、戦闘で右目を失くしたからです。
しかし、悲しいエピソードとはその事ではありません。じつは
夫の留守中の政治をも司るほど聡明な妻が、待望の後継息子の誕生後に
この世を去ってしまうのです。
本書は、この祭壇画が妻の没後に描かれたことを詳述しています。
聖母子の絵姿をフェデリーゴはどんな思いで眺めたことでしょう。
訳していて、思わずほろりとさせられました。
パリの装飾美術館で今年みたダチョウのブローチ
その一方で、洗練された知的なジョークに心和みます。
「(…)ロッツも、私と同じくにわか鳥類学者になったとみえて、
「ダチョウの卵(huovo di sturzo)」がシエナ大聖堂の別の場所
にも吊り下げられていたことを教示してくれた(…)」
ピエロ・デッラ・フランチェスカ「改悛する聖ヒエロニムス」
(部分図。本書未収録ですが、snowdropのお気に入り)
そのほか、修道会によって異なっていた修道服の特徴から
(腰縄か革ベルトか木の枝か)画中の聖人の名前をつきとめたり、
書簡集から引用したり、と学問の面白さにあふれています。
(ヒエロニムスはのちに聖書のウルガタ訳など優れた業績を残し、
キケロに比肩する文体の達人とエラスムスから讃えられました)
圧巻なのは、バラエティ豊かな各章が思いがけない所でつながり
有機的なまとまりを持った一冊となっている点です。
まるで優れた研究者の脳内を覗きこんでいるよう。
大型書店や大学図書館で見かけたら、お手にとってみてください。
本が到着した日に開花した庭の百合
東(ひがし)西 美(は)しきものらは通ひあふ師より学べり四十(しじふ)年かけ
the West and the East,
beautiful things resemble
each other, which
I have learnt through my professor
for around forty years
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