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紫陽花はうそつき?(The hydrangea is a liar?)

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紫陽花はうそつき?
花に見えるのは、じつは萼(がく)。
青い花と蕊(しべ)はこんなに小さい!

The hidrangea is a liar.
What look like flowers are the sepals.
Its blue flowers and stamens are so small!


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ちっちゃな蜂を探してごらん。
ピンクとブルーのひらひらの中じゃなくて、
金平糖みたいな蕊(しべ)の集まったところ。
蜂はちゃぁんと知っている。

Do you find a little bee (in the 2nd fig.)?
Not on the petals but on the star-like stamens.
The bee knows well where the real flowers are.


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「pompadour madame」の画像検索結果

(google search)



華やかなフリルがついているのは、飾り花。貴婦人のドレスのような。
(ポンパドゥール夫人はフランスの紫式部あるいは清少納言?

The decorative sterile florets look like the frills of a dress of
Madame de Pompadour, French Sei Shonagon or Murasaki Shikibu?



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むかし、日本には萼アジサイしかなかった。
万葉集の紫陽花の歌はわずか二首。
紫式部にも清少納言にも顧みられることはなかった。

山にひっそり咲く紫陽花に魅せられたのは
江戸時代に来日した医師にして自然科学者、シーボルトだった。
ある日彼は、装飾花
に覆われた手毬のようなアジサイを見つけた。

彼はその青い手鞠花をヨーロッパへ持ち帰った。

There were only the lacecap hydrangea in Japan.
Both Murasaki Shikibu and Sei Shonagon ignored it.
It was Siebold who admired it for the first time.
He found a Japanese handball-like one covered with
the decorative sterile florets, which he brought to Europe.


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シーボルト(1796-1866)の "Otakusa" (wikipedia)


彼には日本人の妻がいた。楠本滝、お滝さん、オタキサン
紫陽花は海を渡ったが、お滝さんは日本に残された。
お滝さんは娘のイネと小舟から夫の船を見送った。
きっと少しでも長くシーボルトを見ていたかったのだろう。
シーボルトは帰国後、その紫陽花に日本の妻の名前をつけた。
彼の植物誌に記されたOtakusa
オタクサの文字をみるたび
切なくなる。


He had a Japanese wife, KUSUMOTO Taki, O-Taki-san.
He brought back the hydrangea bur left his wife in Japan.
She and Ine, their daughter saw him off from a small boat
because they wanted to see him as long as possible, I think.
After returning, he named the hydrangea "
Otakusa".



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お滝さんに代はりて詠める * in place of O-Taki-san


紫陽花の海の彼方へ消えてゆく優しい嘘つき…青い瞳の


my gentle liar

who is vanishing

in the hydrangea sea

my gentle blue eyes

just like that hydrangea!


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アジサイと稲田 * hydrangea and rice (Ine) field

イネに代はりて詠める *
in place of Ine, Siebold' s daughtrer


海の果てに橘ありや時じくの香の木の実のあらましものを


overseas
is there Chirtus tachibana
a fruit of the longevity?
I wish I could bring it
to my father


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手毬のような「山あじさい」


イネは父と同じ医師となり、木の実ではなく医術で
人々の命を延ばした。

Ine became a doctor like her father and healed the people
not by the fruit but by the medicine.


今日は父の日です Today is Father's Day in Japan.



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18世紀末に中国経由でヨーロッパに伝わっていた紫陽花から、
そしてシーボルトと海を渡った青い手毬のような山紫陽花から、
色とりどりの西洋アジサイが生まれた。
虹の毬のような花々には、雨を知らないものも多いかもしれない。

From the hydrangea that had been transferred to Europe via China,
and Siebold's blue hydrangea, various colours of flowers were born
in Kew Gardens, London.
Some of those colorful flowers might not know the rain.


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Willebeek le Mair*Little Songs of Long Ago(1912)


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by snowdrop-momo | 2018-06-17 14:55 | Summer(夏の便り) | Comments(11)
Commented by pikorin77jp at 2018-06-17 17:09
紫陽花は嘘つきから始まって 父の日でストーリーがくくられて 素晴らしいなと思いました。。。シーボルトのおたきさんのことは 何かで読んだことがありますが こんな切ないストーリーがあったんですね、、、イネさんもお医者さんになられて シーボルトの意志を引き継ぎ命をつないでこられたのですね。また知らないことを おしえていただきました。
紫陽花のお菓子 とっても綺麗です。
Commented by 1go1ex at 2018-06-17 22:11
赤い色の紫陽花もあるんですね。
私はやっぱり空色のが一番好きです。
ヤマアジサイのお菓子、きれいですね!
食べるのがもったいない…。
頭に「山」がつく山野草の花って、たいていきれいですね。
小ぶりなのに存在感があります。

シーボルトの人間像、いまだによく理解できません。
単純に言って、「いい人」だったのか「悪い人」だったのか。
どちらにも当てはめられないところが人間の面白さではありますが。
名前を度忘れしましたが(最近、こういうことが多くて困ります)、「先生の御庭番」という小説を読んだとき、
ますますわからなくなってしまいました。
Commented by snowdrop-momo at 2018-06-18 06:58
*pikoさん
じつはこの記事、来週のための下書きを始めたら、シーボルトからイネへ思いが広がって…
それで急きょ父の日に公開することにしました。
楠本イネについては司馬遼太郎『花神』をはじめ幾つか本が出ていますが
まだ読んでいないんです。いつか続きを綴ってみたいです。
山紫陽花のお菓子、真ん中の斑点に心ひかれて求めました。
ヤマボウシという白い花も、山では赤い斑点ができるんです。それを思い出して。
歌に出てくる橘をかたどったお菓子は別記事に入れてしまいました。。。
Commented by snowdrop-momo at 2018-06-18 07:16
*1go1exさん
レッド・ビューティーというんですって。
赤い紫陽花は洋間に飾ると似合いそうですね。
日本の山や寺や庭にしっくり馴染むのはやはり青い紫陽花です。
山法師もきれいな季節ですね。

山紫陽花のお菓子、中に粒あんが入っていて
予想外のひなびた味わいにほっこりしました。
写真を撮りたくて、一日おいてから頂いたんですけど…

シーボルト、個人の人柄のほかに、時代もあって
現代から理解するのはなかなか難しいですね。
拙連載「北斎の娘」でも、正面から扱いはしませんでしたが
彼に代わってこんな歌を詠みました。
「オタクサよわれ汝(なれ)を呼ぶ汝も子をも置きて戻りし独逸の庭で」

『先生のお庭番』、文庫本になったころ読みました。
本から目を上げると、新緑の窓から、長崎の海が見える気がしました。
馬上の先生に抱かれた少年が叫ぶ阿蘭陀語、オランダ語は知らないけれど
涙が出ました。
そういえば、「北斎の娘」を構想していたころ、あの『眩(くらら)』が出たんです。
朝井まかて、気になる作家さんです。
Commented by snowmarch321 at 2018-06-22 15:20
一枚目と5枚目の紫陽花のお写真、色が抜けていてとても素敵ですね。
私はまだこういう風にしたことがありません。。
昔日本にはガクアジサイしかなかったというお話はこの間何かで読んだばかりです。
やっぱりそうなのですね。
シーボルトとお滝さん、そしてオタクサという名前を教えてくれたのは、ずっと昔のブログのお友達でした。
お滝さんには娘さんがいらしたのですね。
色々なことをsnowdropさんのところで学びます。
お話が飛びますが、うちのお向かいに住んでいる方のまだ思春期のお嬢さんのお名前が紫陽花とかいて「シヨカ」ちゃんというのだそうです。
紫陽花の名前がオタクサでその紫陽花の名前のシヨカちゃん。なんとなく連想してしまいました。
小さい頃に一度だけうちに上がってまだ赤ちゃんだったらーらを見て帰りました。
本当にお話が飛んで失礼しました。
紫陽花のお菓子、とてもきれいですね。
Commented by snowdrop-momo at 2018-06-22 18:45
*snowmarchさん
この色抜けはコンデジ内蔵の機能を使ったんです。
注目してほしい部分だけをカラーにすれば分かりやすいかと…
自動的に真ん中だけがカラーになるので、
カラーにしたい個所を真ん中において撮って、
パソコンに取り込んでからトリミングしました。

シーボルトやお滝さんやイネのことは
北斎の娘について連載したときに知りました。
じかに会ったことはないけれど、古い知人の噂話をしている気分です。
”学ぶ” なんて恐縮です。気楽に読んでくださいね。

紫陽花と書いて、シヨカちゃん、可愛いですね♡これもキラキラネームでしょうか☆☆
いまの学校の先生は生徒の名前を覚えるのが大変でしょうね~。

らーらちゃんとの出会いは紫陽花の季節だったのでしょうか。
節目の季節には色々思い出すこともあるとお察しします。。。

羽の生えたお話、大好きですよ。^^
紫陽花のお菓子、お目にかなってうれしいです。
Commented by milletti_naoko at 2018-06-22 19:56
先日訪ねた紫陽花まつり開催中のボルセーナの宿で、
お祭りですしと、宿を営む夫妻から甘茶をいただき、
その説明にシーボルトの名を見て、シーボルトが紫陽花を西洋に伝えたのか
と驚きました。館の庭には、まだ咲いていないもののOtakusaという札
のついた紫陽花もあり、日本の女性の名前からついたそうですよと
夫妻から聞いて、そういう日本女性の名前はないようなと思ったら、
おたきさんだったのですね。つい先日、ブログのお友達の記事で
シーボルトとお滝さんの物語を読み、驚いていたところです。
悲しい二人の恋物語、けれども、その出会いのおかげで、今
イタリアでも紫陽花を愛でることができるのですね。
Commented by snowdrop-momo at 2018-06-23 18:55
*naokoさん
イタリアで甘茶と紫陽花、素敵ですね。
Otakusaもあったのですか!
きっともうすぐ咲くのでしょうね。
シーボルトは「オタキサン」とうまく発音できず
「オタクサ」と呼んでいたようです。
紫陽花の季節、いろんな方が
シーボルトとお滝さんを偲んでおられるのですね。
イタリアの紫陽花をnaokoさんに見せて頂けて
感慨深いです。
Commented at 2018-06-27 14:22
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by snowdrop-momo at 2018-06-28 06:27
*鍵コメさん
うれしいです。ありがとうございます。
オタクサの余韻がちょっぴり悲しいので、もうじき「うた暦」で
オタフク(!)の記事を公開しますね。また来てくださいね。
snowdrop、ウソ ツカナ~イ ^^
Commented at 2023-06-24 12:02
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。